機能性表示食品制度は2015年に導入されました。サプリメントなどの加工食品のパッケージに表示されているのをよく目にしますが、もやしやトマトなどの生鮮食品のなかにも、機能性表示食品として販売されている食品があります。
そこで、ここでは、機能性表示食品とはどのような食品なのかを説明し、生鮮食品でも機能性表示食品として届け出るメリットについて解説します。
機能性表示食品とは
機能性表示食品は保健機能食品のひとつです。もともと機能性を表示できる保健機能食品は、健康の維持増進に役立つ科学的根拠があり、国が個別に許可した「特定保健用食品」(トクホ)、科学的根拠が確認された栄養成分を含み、国の規格基準に適合した「栄養機能食品」に限られていました。
しかし消費者が食品を購入する時の参考になるよう、機能性を分かりやすく表示した商品を増やすため、2015年に「機能性表示食品」制度が新たに追加されました。ちなみに栄養補助食品、健康補助食品として販売されている食品は、機能性の表示ができないため、保健機能食品ではなく、一般食品となります。
事業者は、食品の安全性や機能性についての情報を販売日の60日前までに消費者庁長官に届け出て、書類が受理されれば「機能性表示食品」として販売することができます。「機能性表示食品」は「特定保健用食品」(トクホ)と異なり、個別の商品の安全性や機能性を消費者庁が審査し、許可した食品ではありません。
機能性表示食品には何を表示できるの?
機能性表示食品は、未成年者や妊産婦、授乳婦を除き、疾病に罹患していない人を対象にした食品です。商品のパッケージには、「脂肪や糖分の吸収を抑える機能があります」「おなかの調子を整えます」など、健康維持や増進に役に立つ機能のある成分が含まれていることを表示できます。
しかし機能性表示食品は医薬品ではないため、「糖尿病の予防になる」「高血圧が改善します」など、その食品を摂取することで、特定の病気の治療効果や予防効果があるかのような表現の記載は認められていません。また「肉体改造できる」「美白」「増毛が期待できる」といった健康維持の範囲を超えた機能があるかのような表現もできません。
パッケージには、一日に摂取する量の目安、摂取方法、一日の目安量に含まれる機能性関与成分の摂取量の表示と合わせ、多量に摂取しても病気が治癒したり、より健康が増進したりするわけではないこと、「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを」と表記し、その食品だけで健康維持が期待できるわけではないことも明示し、消費者に知らせなければなりません。
「バランスのとれた食生活で効果アップ!機能性表示食品を徹底的に解説します」
機能性表示食品として販売できる生鮮食品がある!
機能性表示食品はアルコールを含む飲料や、脂質、コレステロール、糖類、ナトリウムの過剰な摂取につながる食品以外の、食品全般が対象です。大きく分けると、サプリメント形状の加工食品、サプリメント以外の加工食品、生鮮食品の3つがあります。
2021年5月現在、消費者庁に届け出された機能性表示食品は4001件ありますが、このうち一番多いのはサプリメント形状の加工食品で2041件です。一方、生鮮食品は最も少なく、105件にとどまっています。販売中の機能性表示食品の生鮮食品となるとさらに減少し、60件しかありません。
農林水産省では、生鮮食品における機能性表示食品の取り組みをすすめるため、「野菜・果実」「食肉鶏卵」「生乳など」「米・麦」「きのこ」「水産物」と、品目ごとに生産や販売団体からの相談窓口を設置しています。
生鮮食品ではどんな機能を表示できるの?
機能性表示食品として消費者庁に届け、販売されている生鮮食品の例を挙げると、みかんには、「β-クリプトキサンチンは骨代謝の働きを助けることにより、骨の健康に役立つ」、トマトには「GABAは血圧が高めの方の血圧を下げる」「GABAには一時的な精神的ストレスを緩和する機能がある」「リコピンには血中LDLコレステロールを低下させる機能がある」、ほうれん草やかぼちゃには「ルテインは、光による刺激から目を保護するとされる網膜色素を増加させる」といった機能が商品パッケージに記載されています。
消費者が注意しなければならないのは、例えば青果店やスーパーで販売されているトマトのうち、機能性表示食品として販売されている品種だけに、血圧を下げる効果のあるGABAや、血中LDLコレステロールを下げるリコピンが含まれているわけではないという点です。
機能性表示食品として届け出していないトマトにも、同様の機能があるかもしれませんし、GABAやリコピンの含有量は機能性表示食品として販売されているトマトよりも多い可能性もあります。このような状況から、機能性表示食品として届け出るメリットをあまり感じない生産団体が多いことが、生鮮食品のカテゴリーでの届け出件数がサプリメントやチョコレートなどの加工食品に比べて少ない理由の一つとして挙げられます。
機能性表示食品は生産・販売団体ごとに届け出をするので、同じ地域で育てられた同じ品種のトマトでも、販売団体や生産団体が異なれば、機能性表示食品として販売できないことになります。
機能性表示食品として生鮮食品を販売するメリット
安心安全な食品を求める消費者が増えているなか、機能性表示食品を販売する事業者は、消費者に対して、安全性の根拠を明確に表示できるというメリットがあります。また消費者の健康志向が高まっていることから、食品を摂取することで得られる機能を消費者に明示できる機能性表示食品は、マーケティング上で差別化を図ることができます。
実際、もやしを製造、販売する業者では、機能性表示食品として届け出て以降、食品のブランド化に成功し、売り上げがあがっています。また機能性表示食品は、摂取して健康被害があった場合に、消費者が販売・製造先に連絡できるよう、パッケージに電話番号を明記しなければならないことになっています。
このことも、食品を購入する際の消費者の安心安全につながっているといえます。どのような食品が機能性表示食品として届けられているかという情報は、消費者庁のウェブサイトで公開されており、消費者は安全性や機能性について確認できる仕組みになっています。
「機能性表示食品ってどんなもの?どういうメリットとデメリットがある?」
生鮮食品における機能性表示食品を普及させる効果
生産者には、安全かつ安心な食品を消費者に提供する使命がありますが、加工食品と違って、生鮮食品は、商品の情報が分かりにくいのが現状です。機能性表示食品は食品の安全性をパッケージに表示することができるため、消費者が購入する際の目安となります。
またどの程度摂取することで、健康増進にどんな機能が期待できるのかも明示できるので、消費者に健康への関心を喚起する効果もあります。